法人成りしたら必須!社長も対象「特別徴収」で住民税の納め方が変わる

個人事業を法人成りさせると経理・税務の手続きもガラッと変わります。
特に、個人事業主時代は自分に給料を払っていませんでしたが、法人成りして役員報酬を支払うようになると、住民税の納付方法も変わります。
これまでは自分で納めていた住民税が、会社からもらう役員報酬から天引きして納める特別徴収という形に変わります。
今回は、この住民徴の特別徴収について、法人(会社)が果たすべき義務と具体的な手続きの流れを、元個人事業主の方にもわかりやすく解説していきます。
特別徴収とは
住民税の納付方法には、納税者本人が自分で納める普通徴収と、会社が給与から天引きして納める特別徴収の2種類があります。
そして、給与所得者の住民税については、この特別徴収が原則であり、現在ではほとんどの市町村で企業に義務付けられています。
会社(給与支払者)は「特別徴収義務者」として、従業員(納税義務者)の代わりに税金を徴収し、納入する責任を負います。
手続きの流れを簡単に見てみましょう。
まず、会社は毎年1月末までに、従業員の1月1日時点の住所地の市区町村に「給与支払報告書」を提出します。
これを受けて市区町村が税額を計算し、5月末までに会社に「特別徴収税額通知書」を送付してきます。
会社はこの通知に基づき、6月から翌年5月までの12か月にわたって、毎月の給与から税額を天引き(徴収)し、原則として徴収した月の翌月10日までに市区町村へ納入します。
この流れを理解することが、適切な手続きの第一歩です。
給与支払報告書を提出する際の注意点
給与支払報告書は、従業員の申告書に代わるものとして、市区町村が個人住民税額を計算する上で最も重要な資料となります。
所得税の源泉徴収義務がある会社は、原則として毎年1月31日までに、従業員の1月1日現在の住所地の市区町村に提出することが義務づけられています。
提出する際の注意点として、まず提出対象者を漏らさないことが挙げられます。
パートやアルバイトはもちろん、前年中に退職した従業員についても、原則として給与総額が30万円を超える場合は提出が必要です。
退職者の場合は、退職時の住所所在地の市区町村に提出します。
また、提出先を間違えると、従業員が正しく課税されず、後から手続きのやり直しが発生してしまいます。
提出先は、前述の通り従業員の1月1日現在の住所地の市区町村です。
もし間違って提出してしまった場合は、間違えた市町村に「住所誤報」として異動届を提出するとともに、正しい市町村に給与支払報告書を提出することで訂正します。
同一市内での住所の誤りや、住所以外の誤り(例えば扶養家族の数など)の場合は、個人別明細書の摘要欄に「訂正」と朱書きして再提出します。
給与支払報告書をeLTAXで提出している場合は「取消」の提出(手続)区分で、取消分の個人別明細書とともに送信します。
また令和9年(2027年)1月1日以後の給与支払報告書の提出には改正も予定されていますので注意しましょう。
納期の特例
原則として、特別徴収した住民税は徴収した月の翌月10日までに毎月納入しなければなりません。
しかし、毎月の納入手続きは、特に従業員の少ない小規模事業者にとっては大きな事務負担となります。
そんな小規模事業者のために用意されているのが納期の特例制度です。
この特例を利用できるのは、常時雇用している従業員数が10人未満の小規模事業者です。
この要件を満たし、所定の事項を記載した申請書を市区町村に提出して承認を受けることで、毎月納付に代えて年2回の納入にすることができます。
納期限は、1回目が12月10日(6月分から11月分まで)、2回目が6月10日(12月分から翌年5月分まで)となります。
この特例は、あくまで納入の頻度を減らすものであり、税額そのものが軽減されるわけではありません。
また、特例を利用するには事前の申請と承認が必要であり、自動的に適用されるわけではありません。
事務負担の軽減策として有用ですが、毎月の給与から天引きする作業自体は変わらないため、社内での徴収した税額の管理は継続して行う必要があります。
年の途中で退職・転勤があった場合の手続き(異動届)
特別徴収の対象となっている従業員が、年の途中で退職や転勤などで給与の支払いを受けなくなった場合、会社は速やかに「給与所得者異動届出書」を提出する必要があります。
この届出書を提出することで、特別徴収から普通徴収への切り替えや、残りの税額の一括徴収といった手続きができます。
提出期限は、異動があった月の翌月10日です。
異動届出書では、残りの住民税の取り扱いを明確にする必要があります。
例えば、最後の給与などから残りの税額を一括徴収して納付するのか、残額を従業員自身が納める普通徴収に切り替えるのかを選択し、市区町村に届け出ます。
まとめ
法人成りによって住民税の納付は自分で払う普通徴収から「会社」が天引きする特別徴収へとガラッと変わります。
ひとり社長の場合でも対象となり、給与計算、給与支払報告書の提出、納期の特例の申請、異動時の手続きなど、やるべきことが一気に増えます。
「給与計算や税務手続きに不安がある」「本業に集中したい」とお考えでしたら、お気軽にお問い合わせください。