電子化の波に乗ろう!経理担当が知っておきたい給与支払報告書や法定調書の新ルール

給与支払報告書の電子申告義務が、いよいよ現実的なものになります。
従来は大企業だけの話と思われていた電子化も、2027年以降は一つの種類ごとに30枚以上提出する中小企業にまで対象が拡大します。
今回は、給与支払報告書関係の事務にまつわる現状とこれからの制度改正などを解説します。
eLTAXで一括提出が可能に
これまで事業者は、給与支払報告書を市区町村に、源泉徴収票を税務署に、それぞれ別々に提出する必要がありました。
同じような内容の書類を2つの提出先に準備するのは、時間も労力も二重にかかる作業でした。
多くの経営者や総務担当者が、年末調整の時期になると、同じような作業を繰り返すことに負担を感じていらっしゃったのではないでしょうか。
この課題を解決するのがeLTAXの電子的提出一元化機能です。
この機能を利用すれば、給与支払報告書を作成する際に「作成区分」欄を「2」とするだけで、自動的に源泉徴収票データも作成され、市区町村と税務署へまとめて提出できるようになります。
具体的には、eLTAX対応ソフトやPCdeskなどを使用して給与支払報告書を作成し、作成区分を「2」(国税・地方税分双方)に設定して送信するだけです。
システムが自動的に適切な提出先へ振り分けて送信してくれるため、従来のような二重の作業が不要になります。
この一元化により、作業時間の大幅短縮が期待でき、入力ミスのリスクも軽減されます。
従来は給与支払報告書の提出を紙で行っていた方もeLTAXでの提出に切り替える一つのきっかけになるのではないでしょうか。
2027年(令和9年)以降の改正
電子提出の義務化
2027年(令和9年)1月以降に提出する給与支払報告書から、前々年(令和7年)に税務署へ提出した給与所得の源泉徴収票の枚数が30枚以上の事業者に対し、電子申告が義務となります。
以前の基準(100枚以上)から大きくハードルが下がり、対象となる事業者層が一気に拡大します。
同様に2027年(令和9年)1月以降に提出する法定調書についても前々年(令和7年)に税務署へ提出した各種法定調書ごとの枚数が30枚以上の事業者に対し、電子申告が義務となります。
判定は法定調書の種類ごとに行われ、例えば給与所得の源泉徴収票のみが基準を超えている場合、他の調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など)は紙での提出が可能です。
電子申告義務のある年度のデータは電子で提出しなければなりません。
この改正は、行政事務の効率化と企業側の負担軽減を目指すものであり、今後も電子化の流れは加速していくと思われます。
みなし提出制度の導入
令和9年(2027年)1月1日以後に給与支払報告書を市区町村へ提出した場合、一定の条件を満たせば税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされるようになります。
このみなし提出制度は、給与支払報告書に記載すべき一定の事項が適切に記載されていることが前提となります。
またこの改正により、源泉徴収票の税務署長への提出を要しないこととされる給与等の範囲が、年の中途において退職した居住者に対するその年中の給与等の支払金額が30万円以下である場合など、給与支払報告書の市区町村長への提出を要しないこととされる給与等の範囲と同様になるなどの変更も予定されています。
オンライン提出の隠れたメリット
事業者が源泉徴収票をオンライン提出すると、従業員が確定申告を行う際に給与所得の情報がマイナポータルとの連携により自動で入力されるようになります。
この機能により、従業員は手入力による入力ミスを防ぎ、確定申告作成時間を大幅に短縮できるようになります。
特に注目すべきは、500万円以下の給与所得の源泉徴収票であっても、オンライン提出した場合は自動入力の対象となることです。
これにより、より多くの従業員がこのメリットを享受できるようになるでしょう。
従来は年間の給与等の支払金額が500万円を超えるものが税務署への提出対象でしたが、オンライン提出することで、支払金額に関わらず従業員の利便性向上に貢献できます。
まとめ
これらの改正は、単なるルール変更ではなく、業務効率化の大きなチャンスにもなります。
早めに対応することにより業務効率化が進み、従業員満足度向上にもつながるかもしれません。
法定調書や給与支払報告書関係の事務の効率化について自社でも導入できるかご不安な方はお気軽にお問い合わせください。