法人へのお金の貸し借り、利息は必要?税務上のリスクを解説

個人事業主やオーナー経営者が、自身の法人に資金を貸し付ける場面は珍しくありません。

また、法人が個人に無利息でお金を貸すケースもよく見られます。

しかし、「家族だから」「自分の会社だから」と無利息でお金を貸すと、税務署から厳しい指摘を受けることがあります。

今回は、個人と法人間、法人から個人への資金貸借における利息の取り扱いと注意点について、分かりやすく解説します。

個人と法人間・法人から個人への無利息貸付けの税務リスク

無利息での資金貸借は、一見すると親族やグループ内ではよくあることですが、税法上はリスクを伴うことがあります。

個人が法人に無利息でお金を貸した場合、本来ならば得られるべき利息相当額が「無償で移転した」とみなされ、贈与税や所得税、法人税の課税対象となることがあります。

一方、法人が個人に無利息でお金を貸した場合も、同じく経済的利益が生じたとみなされ、法人側では利息相当額を益金として計上し、法人税の課税対象となります。

個人側では、利息相当額が雑所得や給与所得として所得税の課税対象となります。

つまり、個人と法人、法人と個人のどちらの方向でも、無利息貸付けは税務リスクを伴うことを強く意識する必要があります。

法人→個人への貸付

株式会社Aの代表取締役B氏が、会社から1,000万円を無利息で借り入れたケースではどうなるのでしょうか。

  1. 法人側の課税(株式会社A)
    • 国税庁の基準利率(令和4年~:0.9%)を適用した利息相当額90,000円が認定利息(益金)として計上され、法人税の課税対象となります。
  2. 個人側の課税(代表取締役B氏)
    • 利息相当額90,000円が経済的利益とみなされ、給与所得として所得税の対象となります。
    • 役員給与となり定期同額給与とならないと法人税の計算上経費とはなりません。

ただしその貸付が災害や病気など臨時的に多額の生活資金が必要になったことに起因して行われたものだったり、その利息の額が年間5000円以下である場合などは課税しなくともよいことになっています。

個人→法人への貸付

経営者Aさんが、自身の会社(株式会社B)に1000万円を無利息で貸し付けるケースをみていきましょう。

  • 法人側(株式会社B)での課税
    • 会社は「借入金」として負債計上し、返済義務が発生しますが法人税は課税されません。
  • 個人側(代表者B)での課税
    • 利息を受け取っていないため所得税は課税されません。
    • ただし特殊なケースでは同族会社等の行為計算否認規定の適用により利息相当額の所得を課税されることがあります。

「行為計算否認規定」とは

「行為計算否認規定」は、簡単に言うと「税金を不当に減らすための取引は認めない」というルールです。

同族会社との取引で、明らかに通常の経済取引とかけ離れた不合理な条件が設定されている場合、税務署はその取引を「なかったこと」にして、税金を再計算することができます。

そのような不自然で合理的でない取引の結果、所得税が不当に少なく計算されてしまうと公平性を欠くことになってしまうため、もともとの取引をなかったものとして税金を計算する強力な規定です。

経済的合理性

税務署は「経済的合理性があるかどうか」を非常に重視します。

ここでいう合理性とは、「普通の商取引として成り立っているか?」ということです。

貸付けの目的、金額、期間、担保の有無、返済条件などが総合的に判断された上で、第三者間でも成立するような商取引となっているかどうかがポイントです。

無利息、無期限、無担保、かつ多額であれば、それだけで「経済的におかしい」とされる可能性が高くなります。

会社の代表者であればその経営責任を果たすために会社に資金を融通することもありますが、そういった理由もないとなると経済合理性が無いものとみられるケースが多くなります。

税務リスクを回避するための実務ポイント

では、実際にどのように対応すれば良いのでしょうか。

まず、法人から個人への貸付けは、基本的に利息を設定しましょう。

目安としては、0.9%以上の金利を設定したうえで、契約書を必ず作成し、返済期限と返済スケジュールを明記することが重要です。

万が一、貸付金が大きく長期にわたる場合は、利息の支払いや返済実績を確実に残し、証拠資料を保管しておくことも必須です。

一方、個人から法人への貸付はその貸付に至った経緯などを記録しておき、こちらも契約書を用意しておきましょう。

その他の留意点

  • 相続時のリスク
    経営者が亡くなった場合、会社への貸付金は「債権」として相続財産となり、相続税の課税対象となります。
  • 贈与や債務免除のリスク
    貸付金を後継者に贈与したり、債務免除をすると、贈与税や法人税(債務免除益)が発生する場合があります。

まとめ

個人と法人間、法人から個人への資金貸借は、たとえ家族間でも「適正な利息を取る」のが鉄則です。

無利息貸付けは、経済的合理性を欠くと税務署に判断され、想定外の課税リスクを抱えることになります。

税務リスクを防ぐには、利息設定、契約書作成、実際の返済実績の3点を押さえることが重要です。

日頃の何気ないやり取りにも慎重な判断が必要となりますのでこのままでよいのかなど不安な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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