法人税に加えて”防衛税”?令和8年スタートの新税制を解説

令和7年度税制改正により、令和8年4月から「防衛特別法人税」が導入されることになりました。
これは、防衛費増額の財源確保を目的とした新たな税金で、原則すべての法人が申告対象となる点で注目を集めています。
基準法人税額から年500万円の基礎控除を引いた額に4%を乗じる仕組みで、中小企業でも比較的大規模な会社や中堅・大企業は実質的な増税となります。
本記事では、実務上の注意点を中心に、制度の全体像をわかりやすく解説します。
防衛特別法人税の導入背景と概要
政府は近年、防衛費の大幅な増額方針を打ち出しています。
これに伴い、令和7年度税制改正により「防衛特別法人税」が創設されました。
留保金課税を受けていない企業については、法人税のうち、所得税額控除や外国税額控除などの控除項目を除いた「基準法人税額」から年間500万円を引いた金額に4%の税率をかけたものが、防衛特別法人税額となります。
つまり、基準法人税額が年500万円を超える企業が実際の納税対象となりますが、税額がゼロの企業も含め、原則すべての法人に申告義務が生じる点が重要です。
対象法人と申告開始のタイミング
対象となるのは、法人税の納税義務を負うすべての法人ですので収益事業を行っていない公益法人等は対象外となります。
課税の開始は令和8年4月1日以後開始事業年度からとなり、3月決算法人の場合、令和9年3月期からが対象ということになります。
12月決算法人なら令和9年12月期から対象となるため、事業年度開始月によって適用開始時期が異なります。
重要な点は、赤字法人や各控除により基準法人税額がゼロの法人であっても申告義務があります。
基準法人税額とは
防衛特別法人税の計算の基礎となるのが、「基準法人税額」です。
これは通常の法人税額から、所得税額控除、外国税額控除、分配時調整外国税相当額の控除などを控除した残額を言います。
この基準法人税額から年500万円の基礎控除を引き、残額に4%を掛けて税額を算出します。
申告書様式の変更と一体化
国税庁が公表した情報によると、防衛特別法人税の申告書は法人税等申告書と一体の様式となります。
具体的には、法人税等申告書の別表一に「次葉一」として追加され、現在の別表一次葉は「次葉二」に変更されます。
つまり、令和8年4月1日以後終了事業年度分の法人税等確定申告書は、別表一の本体+次葉一(防衛特別法人税)+次葉二の計3枚構成となります。
この変更により、会計ソフトや電子申告システムの対応が必須となるため、早期の準備が重要です。
申告手続きと注意点
防衛特別法人税は、法人税の申告と一緒に提出し、提出期限も法人税と同じく、原則として事業年度終了後2ヶ月以内です。
法人税の申告期限が延長されている場合は、防衛特別法人税の申告期限も同様に延長されます。
中間申告についても法人税の中間申告書を提出すべき法人は防衛特別法人税の中間申告書を提出する必要があります。
まとめ
防衛特別法人税は、法人税額が500万円を超えてくる法人に4%を課税する新制度ですが、原則すべての法人に申告義務があるので注意が必要です。
令和8年4月1日以後開始事業年度から適用され、法人税申告書と一体で提出します。
税額がゼロでも申告が必要なため、すべての法人で準備が必要となりますので、申告実務の見直しなどが必要な場合はお気軽にお問い合わせください。