中小企業の設備投資~賢い設備投資の資金調達と節税対策~

企業の成長戦略において設備投資は重要な役割を果たします。
しかし多額の資金を投じる設備投資は、経営判断を誤ると企業経営を揺るがすリスクも伴います。
そこで今回は設備投資を成功させるためのポイントを解説します。
投資効果の測定から税制上の優遇措置まで、わかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
投資効果の測定
設備投資を行う目的は様々ですが、一般的には企業の将来的な成長や競争力向上のためといったものが多いでしょう。
当初の目的が達成されたかどうかを判定するためにどのような指標をウォッチするか事前に決めておくことが重要です。
いずれにしても投資額が小さくなると投資リスクが低くなるので、代替設備の有無や補助金を活用できないか検討しましょう。
NPV
その投資が生み出す将来の利益を金融機関の金利により割り引いた現在価値から投資額を差し引いた金額により投資判断を行います。
NPV=n年後に得られるキャッシュフロー÷(1+金利)n乗の総和ー投資額
NPVの詳細は割愛しますが、NPVがプラスになれば投資価値があり、マイナスになれば投資はやめておいた方がよいとの判断となります。
ROI
ROIとは投資利益率と呼ばれる指標でその投資によってどの程度の利益が得られたかを測るもので下記の算式で求められます。
ROI=投資利益÷投資額×100
分子の利益は投資の目的によって変更してOK です。
生産性向上やコスト削減が目的の場合は経費の減少額で計算します。
投資回収期間
投資回収期間とは初期投資の回収に要する期間をいいます。
投資回収期間=投資額÷投資キャッシュフロー
この期間が長期になればなるほど経済環境も変わり不確定要素が多くなりますので、なるべく短期間の回収が望ましいです。
しかし企業のブランド価値の向上などに資する投資の場合は、その効果も長期にわたりますので投資内容毎に投資回収期間の長短を判断しましょう。
資金調達
設備購入のための資金調達方法には出資者から投資を受けるなどの方法もありますが、中小企業ではなかなか実現性が低いためそのほかの方法をご紹介します。
融資
金融機関からの融資は設備資金の調達方法としてもっともポピュラーではないでしょうか。
必要資金を借入れて設備を購入するため設備の所有権は企業にあります。
事前に返済時期・返済額を決めるため計画的な資金繰りが可能です。
一方融資には金融機関の審査が必要なため企業の信用力や事業からのキャッシュフローが重視されます。
リース
リースとは、企業が設備や機器を購入するのではなく、リース会社(貸し手)から一定期間借りることで投資を行う方法です。
設備の所有権はリース会社にありますが、企業はリース料を支払うことで設備を使用することができます。
リース契約の終了後、設備を返却するか、購入オプションを選択する場合があります。
ファイナンス性の高いリースの場合、契約期間の途中で解約することが実質的にできないことがデメリットになるでしょう。
補助金
補助金による設備投資は、企業が新たな設備を導入・更新する際に国や地方自治体から支援を受ける仕組みです。
2025年現在、設備投資に活用できる主な補助金には以下のようなものがあります。
- ものづくり補助金: 工作機械などの設備投資に最大4000万円の補助が受けられます。
- 新事業進出補助金: 2025年から新設された補助金で、最大9,000万円の補助が可能です。工作機械などの設備投資や建物の建設費にも使えます。
- 中小企業省力化投資補助金: オーダーメイドの工作機械などの設備投資に最大1億円の補助が受けられます。
- 中小企業成長加速化補助金: 売上高100億円を目指す中堅企業向けで、最大5億円の補助が可能です。
- 大規模成長投資補助金: 最大50億円という大型の補助金で、工作機械などの設備投資や建設費に使えます。
最大のメリットは原則として返済不要の資金調達のため初期コストを抑えられるところにあります。
投資リスクを大きく引き下げることができます。
ただ補助金の採択を受けるには綿密な事業計画書の作成や膨大な量の申請書類の準備が必要だったり、申請から実際に補助金の受給まで期間を要すこともありますので注意が必要です。
税制上の優遇措置
大企業の子会社などに該当しない中小企業が設備投資した場合には税制上の特例が多く用意されています。
2025年3月31日までの時限立法ですが内容に一部修正を加え、それぞれ2年間延長される見込みです。
いずれも新品のものに限られますが法人税や所得税、固定資産税などの軽減を受けることができる主なものをご紹介します。
中小企業投資促進税制
青色申告を行う中小企業が対象となり、取得額の30%の特別償却か7%の税額控除(資本金3000万以下の法人・個人事業主のみ)の税制優遇を受けられる制度です。
貸付用の設備やコインランドリー設備など一部対象とならない設備があります。
次の中小企業経営強化税制とは違い、事前に計画書の認定などの手続きが必要ないため使い勝手の良い税制です。
中小企業経営強化税制
大まかな対象者などは中小企業投資促進税制と同様ですが、優遇措置が特別償却100%、税額控除10%(資本金の額が3000万~1億円の法人は7%)と優遇幅が大きくなっています。
また対象資産も建物附属設備が対象となるなどその範囲も拡大しています。
生産性向上設備のA類型から経営資源集約化設備のD類型まであり、各類型ごとに必要書類や経営強化計画の認定・設備の取得のタイミングが異なりますのできちんと適用を受けられるように注意しましょう。
上記の中小企業投資促進税制と合わせて控除前の税額の20%までが上限となります。
固定資産税の特例
資本金1億円以下の法人や従業員数1000人以下の中小企業者が機械等を取得したときに受けられる税制です。
市区町村に先端設備等導入計画の認定を受ける必要がありますが固定資産税が最大5年間、1/3になりますので設備投資に係るランニングコストの低減が可能です。
中小企業庁 固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)
まとめ
設備投資は企業にとって大きな意思決定の一つです。
そのため投資の回収可能性の検討や漏れの無い優遇税制の適用など投資を行う前の準備が重要になってきます。
筒井会計事務所では日ごろからお客様の設備投資計画を伺い、サポートさせていただいておりますのでお気軽にお問い合わせください。