赤字が出たら要チェック!損益通算の基本ステップと注意点

所得税の計算において、ある所得で赤字が出た際に他の黒字から差し引くことができる制度、それが損益通算です。

新規事業の立ち上げや不動産投資などで一時的に損失が発生することもあるかもしれませんが、この仕組みを正しく理解していればトータルの納税額を抑えることが可能です。

しかし、実はどんな赤字でも他の所得と合算できるわけではありません。

今回は、損益通算の対象となる所得の種類や、実務上の注意点を整理していきます。

損益通算の対象となる4つの所得

所得税には10種類の所得区分がありますが、そのすべてで損益通算ができるわけではありません。

対象となるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、そして譲渡所得の4つです。

例えば、本業の事業所得が黒字であっても、所有している賃貸物件の管理費や減価償却費がかさんで不動産所得が赤字になった場合、その赤字を事業所得から差し引くことができます。

これにより、課税対象となる総所得金額が減り、結果として所得税や住民税の負担を軽減できるというわけです。

ただし、注意が必要なのが損益通算の対象に含まれているはずの譲渡所得の扱いです。

制度上は対象とされていますが、実務では対象外となるケースが多くあります。

まず、生活に通常必要でない資産(ゴルフ会員権や別荘、貴金属など)を売却して出た損失は、他の所得との通算が認められていません。

また、そもそも家具や衣服などの生活用動産を売った際の損失は、税務上「ないもの」として扱われます 。

さらに、土地・建物など不動産の譲渡による所得などは分離課税とされており、原則として他の所得(給与や事業など)と損益を合算することはできません。

この他にも不動産所得のうち損益通算できないものがあったりと、単に赤字が出たからといって安易に他の所得から引けるわけではないため、損益通算できないものもあることを頭に入れておきましょう。

不動産所得の損失における特殊な制限

不動産所得の赤字は損益通算の代表格ですが、実は何でも引けるわけではありません。

土地取得利子

最も代表的なのが、土地を取得するために借り入れたお金の利子に相当する部分です。

不動産所得の計算上、不動産の取得にかかる借入金利子は経費になりますが、不動産所得の赤字のうち土地の取得にかかる借入金利子については損益通算の対象外とされています。

つまり、その分は他の所得から差し引くことができず、切り捨てられてしまうのです。

別送の貸付

また、別荘などの生活に通常必要でない資産の貸し付けから生じた損失も、他の所得との通算はできません。

国外中古建物の減価償却を使った損失

近年、取り扱いが厳しくなった論点です。

海外の中古物件を取得し、簡便法で短い耐用年数を設定して多額の減価償却費を計上し、意図的に赤字を作り出す手法が問題視されました。

現在は、国外中古建物の賃貸から生じた損失のうち、このような償却によって発生した減価償却費に相当する部分については、損益通算の対象外とされています。

またこの規定は給与所得など他の所得との損益通算だけではなく、国内にある不動産から生じる不動産所得との通算もできないこととなっています。

譲渡所得の通算範囲

譲渡所得は損益通算の対象に含まれていますが、実務上は最も混乱しやすい項目かもしれません。

まず大原則として、ゴルフ会員権や一定の貴金属など生活に通常必要でない資産の譲渡から生じた損失は、現在では他の所得(給与や事業など)との損益通算ができなくなっています。

また、土地や建物の売却、あるいは株式の売買による損失は、分離課税という独立した枠組みで計算されます。

そのため、不動産を売って出た大きな赤字はその他の不動産を売って得た利益とは通算できますが、本業の事業所得や給与所得から差し引くことは原則としてできません。

ただし、特例として居住用財産(マイホーム)を買い換えた際の損失などは、一定の要件を満たせば他の所得と通算できるケースもあります。

このように譲渡所得については「何を手放して出た赤字なのか」によって扱いが大きく変わります。

一概に損益通算ができる・できないと思い込まず、個別の事案ごとに税制上の特例が適用できるかどうかを精査しましょう。

赤字が消えない場合の純損失の繰越控除

損益通算をしてもなお引ききれなかった赤字、いわゆる純損失はどうなるのでしょうか。

その場合、青色申告をしている納税者であれば、その年に引ききれなかった損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字から差し引くことができます。

例えば、事業を始められた方が創業初年度に多額の設備投資や広告宣伝費を投入して大きな赤字が出た場合、その赤字を翌年以降に持ち越すことで、2年目、3年目の税負担を軽減させることができます。

ただし、この恩恵を受けるためには、損失が出た年もそれ以後の年分も継続して確定申告を行っていなければなりません。

「赤字だから申告しなくていいだろう」と放置してしまうと、翌年以降の税負担の軽減をみすみす逃すことになります。

まとめ

所得税の損益通算は、複数の収入源を持っている方にとって重要な制度です。

しかし、不動産の土地利子や分離課税の譲渡所得など、適用外となる取り扱いも数多く存在します。

当事務所では顧問契約をご検討中の方を対象に、初回面談を無料で実施していますので、現在の処理に不安がある方や、長期的な税務パートナーをお探しの方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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