複数の視点をもとう!合計所得金額が税金に与える影響とは

会社の決算や個人の確定申告の時期になると、よく耳にするのが合計所得金額という言葉です。
単なる収入の合計だと思われがちですが、実は税制上の様々な優遇措置を受けられるかどうかの判定基準として、非常に重要な役割を担っています。
この金額が少し基準を上回るだけで、受けられたはずの控除が消えてしまうことも少なくありません。
今回は、合計所得金額の正体を分かりやすく紐解いていきましょう。
合計所得金額とは
合計所得金額は、「その人に生じた各種の所得を、一定のルールに従って合算した金額」です。
日常用語の「年収」や「手取り」とは全く別物で、「税法上の物差し」として使われる数字だとイメージしておくと分かりやすいと思います。
税法では、所得を給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得・雑所得・一時所得・譲渡所得…というように10種類に分けています。
合計所得金額は、これらのうち一定のものを集めて足し合わせた金額で、まだ基礎控除や配偶者控除などを引く前の段階の数字です。
よくある誤解として、「源泉徴収票の支払金額=合計所得金額」ではありません。
給与の場合は、支払金額から給与所得控除を差し引いた後の給与所得が、合計所得金額の材料になります。
同じように、事業なら売上ではなく事業所得、不動産なら家賃収入ではなく不動産所得として、それぞれ必要経費などを引いた後の金額を合算していきます。
もう少しだけ厳密に説明すると、合計所得金額は次のような金額の合計額を言います。
- 総合課税の所得(給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得・公的年金等の雑所得など)を合計した金額
- 総合課税の長期譲渡所得・一時所得については、損益通算後の金額を2分の1にした金額
- 申告分離課税の譲渡所得などがある場合は、その特別控除前の金額
- 退職所得や山林所得の金額
- 純損失や雑損失の繰越控除は「まだ差し引く前」の状態で考える(ここが総所得金額等との大きな違い)
つまり、合計所得金額として決められた各種所得の金額のうち、繰越控除や特別控除前の段階の金額を足し合わせたものが合計所得金額ということになります。
合計所得金額が各種控除に与える影響
なぜこれほどまでに合計所得金額を気にする必要があるのでしょうか。
それは、多くの税額控除や所得控除の入り口に、この金額による制限が設けられているからです 。
具体的な例を挙げると、配偶者控除や扶養控除を受けるためには、対象者の合計所得金額が48万円以下でなければなりません。
また、配偶者特別控除を適用しようとする本人の所得制限は1,000万円以下、住宅ローン控除や居住用財産の譲渡損失の特例の適用を受けるためにも所得制限が設けられています。
さらに、寡婦控除や勤労学生控除など、多くの項目で500万円や65万円といったラインが設定されています。
このラインを一円でも超えてしまうと、控除や特例がバッサリと切り捨てられてしまうため、注意が必要です。
課税方法の選択による金額のコントロール
合計所得金額を適切に管理するためには、申告するかしないかという選択肢を上手に行使しましょう。
例えば上場株式等の配当については、総合課税、申告分離課税、あるいは申告不要という選択肢があります。
所得が少ない方であれば、総合課税を選んで配当控除を受けた方が有利な場合もあります。
一方で、合計所得金額を一定以下に抑えたいのであれば、あえて申告不要を選択し、源泉徴収だけで済ませるという戦略もアリです。
一部の配当は損失とぶつけるために申告し、残りの配当は所得金額に含めないために申告不要にするといった、特定口座や銘柄ごとの使い分けを検討することも実務上あり得ます。
また居住用財産を譲渡して利益が出た場合に、買換え特例を選ぶか、3000万控除を選ぶかでも合計所得金額が変わってきます。
株式等の譲渡損失と損益通算の注意点
前年以前に上場株式等で損失が出た場合、配当所得と相殺(損益通算)することで税金の負担を軽減できることがあります。
これ自体は有効な手段ですが、合計所得金額との兼ね合いでは注意が必要です。
損益通算や繰越控除を適用するために申告分離課税を選択すると、その所得データが合計所得金額に反映されます。
例えば、配当金をあえて申告することで数万円の税金を取り戻せたとしても、その結果として合計所得金額が増え、配偶者控除が受けられなくなったり、社会保険料の負担が増したりするケースがあるのです。
申告することで得られる還付額と、それによって失う控除や増える負担を天秤にかけ、多面的に判断する視点が求められます 。
まとめ
合計所得金額は、単なる税金の計算だけでなく、社会保障制度や教育費の助成など、多方面に影響を及ぼします。
そのため、申告書を提出する前の段階で、トータルでの有利不利をシミュレーションしておくことが不可欠です 。
当事務所では、確定申告や顧問契約をご検討中の方を対象に初回面談を無料で実施していますので、複雑な所得の組み合わせや、最適な申告方法の選択にお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

