【法人成】消費税の免税制度を受けるための注意点

事業を営んでいる中で負担の大きい税金の一つに消費税が挙げられます。

法人成りすると消費税が免税になる期間が生まれることがありますが法人の設立内容に注意しないと設立初年度より消費税の納税義務が生じることになります。

今回は消費税を支払っている個人事業から法人成りをしたケースをもとに消費税の納税義務を解説します。

消費税免税へのフローチャート

ある年度の消費税を納める義務があるかどうかの判定にはいくつかのチェックポイントがあり、すべてクリアした場合のみ消費税が免税となります。

  1. インボイス発行事業者となるために登録しているかどうか
  2. 2年前の課税売上が1000万円超かどうか
  3. 前年度の上半期6か月の課税売上又は給与の総額が1000万円を超えているかどうか
  4. 消費税の課税事業者を選択しているかどうか
  5. 期首の資本金の額が1000万以上かどうか

このほか相続により個人事業を引き継いだ場合や合併・分割があった場合などは別に判定基準がありますが今回のケースには該当しませんので割愛します。

インボイス発行事業者となるために登録しているかどうか

令和5年10月よりインボイス制度が開始しておりインボイスを発行するためには税務署への登録が必要になりました。

インボイスを発行するために税務署に登録した場合は免税事業者となることはできないため登録日以後の取引について消費税の納税義務が発生します。

事業を開始した免税事業者の場合は、登録日を法人の設立日まで遡ることができる特例や任意の希望日(登録申請日より15日以降の日)とすることができる特例があります。

2期前の課税売上高が1000万円超かどうか

インボイス制度の登録をしていない事業者は2期前(いわゆる基準期間)の課税売上高(売上高や雑収入・資産の売却対価のうち消費税の課税取引に該当するものの合計)が1000万円を超えている場合は納税義務が発生します。

法人を設立した初年度および第2期は2期前の事業年度が存在しないためこの段階での納税義務は発生しません。

ちなみに基準期間が設立初年度など事業年度内の月数が12月でない事業年度の場合は課税売上高を1年相当に換算した金額により判定します。

前年度の上半期6か月の課税売上高又は給与の支払額が1000万円超かどうか

前記により課税事業者に判定されていなくとも、前期の上半期6か月の課税売上高又は給与の金額が1000万円超である場合は納税義務が発生します。

法人成りして第2期はこの判定も出てきます。

なお令和6年10月1日以後に開始する事業年度からは国外事業者については給与による判定をすることはできず課税売上高の判定のみとなります。

消費税の課税事業者を選択しているかどうか

設立初年度などは事業の開始準備などで多額の設備投資を行うことがあります。

消費税の納税額=預かった消費税ー支払った消費税なので設備投資により支払った消費税が多額になると消費税の還付を受けることができます。

ただこの還付を受けることができるのは消費税の申告・納税をしている事業者に限られますので上記の判定により免税事業者となっている方は還付が受けられません。

還付を受けるためには消費税の課税事業者となる必要があるためあえて課税事業者を選択する必要がありますのでこの選択をしている場合は納税義務が発生します。

消費税の課税事業者を選択すると最低2年間は消費税の課税事業者となり免税事業者には戻れませんので初年度の還付額と2年目以降の納税額をシミュレーションして有利・不利を判断します。

期首の資本金の額が1000万円以上かどうか

設立初年度及び第2期の基準期間がない事業年度の開始の日の資本金の額が1000万円以上の法人は納税義務が発生します。

3期目以降の基準期間がある事業年度は適用されませんので3期目以降の事業年度の開始の日時点の資本金の額が1000万円以上であってもこの判定により納税義務が発生することはありません。

法人設立の際の注意点

法人を設立する際に会社名や資本金額、社内機関の設計などから設備投資計画まで様々な事項を決定していきますがその際の注意すべき点を紹介します。

インボイス発行事業者

得意先がビジネスを行っている場合などはインボイスを要求されることがありますのでインボイスの登録を検討されている方も多いと思います。

インボイスの発行事業者に登録すると免税メリットは受けることができませんのでどちらを優先させるか判断が求められます。

またインボイスの登録は取り消すこともできますが、一定の場合には登録した日から最低2年間は取り消しできないため注意が必要です。

事業年度

意外と見落とされがちなのが事業年度をいつからいつまで(決算日)とするかということです。

個人事業時代に事業を拡大し従業員を雇用してきた方は法人成りした当初から一定規模の売上や給与の支払いが予想されます。

設立初年度の上半期6か月の売上・給与の支払額が1000万円を超えそうな方は第2期より納税義務が発生してしまします。

売上、給与の金額が上半期で1000万円を超えそうな場合は設立初年度を7月以下になるように決算日を設定することで免税メリットを最大限享受できます。

設備投資

設備投資の金額によっては免税メリットを上回る可能性もありますのであえてインボイス登録や課税事業者を選択する選択肢も出てきます。

なお100万円以上の固定資産などを購入した場合などは3年間免税には戻れませんので、設立から第3期まで(場合によっては4期目以降も)の設備投資額の計画を立て、還付額と免税額のシミュレーションが必要です。

個人事業から法人へ譲渡した場合の建物や機械などの事業用資産も含めて考えましょう。

個人事業の消費税申告の際に売却に係る消費税の申告が漏れがちとなりますのでその点も注意が必要です。

資本金

消費税の免税事業者となるためには資本金の額を1000万円未満で会社を設立しましょう。

現在は最低資本金制度が廃止されたので資本金1円の会社も設立可能です。

まとめ

法人成りの目的は様々ですが消費税の免税メリットも重要な検討事項のひとつではないでしょうか。

しかしこのほかにもサービス設計や資金繰りなど検討しなければならないことがたくさんある中での免税額や還付額のシミュレーションは後回しになってしまいがちです。

筒井会計事務所では消費税の課税選択シミュレーションも行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

Follow me!

【法人成】消費税の免税制度を受けるための注意点” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。