青色申告のメリットを活かす!個人事業の回収不能リスクに備える貸倒引当金

個人事業を営む皆様、取引先からの入金が遅れたり、回収できなくなったりする不安を感じたことはありませんか。
そんな将来の貸倒れリスクに備えつつ、現在の税負担を軽減できる仕組みが「貸倒引当金」です。
今回は、所得税における貸倒引当金の基本から計算方法・注意点まで解説します。
目次
貸倒引当金とは
貸倒引当金は、売掛金や貸付金などの金銭債権が、将来相手先の倒産などで回収できなくなるリスクに備え、事前に予想される損失額を費用として計上する勘定科目です。
貸借対照表では、金銭債権を相手先の倒産リスクに応じて区分し、それぞれに貸倒見積額を算定して資産のマイナス(評価勘定)として表示します。
しかし所得税の世界では、経費として認められるのは原則として12月31日までに債務が確定しているものに限られます。
これを債務確定基準と呼び、将来の予測で費用を計上することは本来許されません。
そこで、期間損益を適正に計算し税負担を平準化する目的で、将来の損失見込みを例外的に必要経費に算入できるのが貸倒引当金という制度です。
まだ現実に損をしていない段階で、あらかじめ損失を見越して経費化するようなイメージです。
適用できる所得区分
貸倒引当金が適用されるのは、事業所得・不動産所得・山林所得に係る金銭債権です。
給与所得や雑所得には適用できません。
また、一括評価(後述)は青色申告者のみに認められた特典である点に注意が必要です。
※ 白色申告者は個別評価のみ利用可能です。
| 事業所得 | 不動産所得 | 山林所得 | その他の所得 | |
| 青色申告 | 〇 | △ | △ | × |
| 白色申告 | △ | △ | △ | × |
〇…個別評価金銭債権・一括評価金銭債権ともに設定可
△…個別評価金銭債権のみ設定可
×…貸倒引当金の設定不可
貸倒引当金の限度額
個別評価金銭債権
特定の取引先などの事業関係者が倒産・経営難に陥った場合に設定するのが個別評価の引当金です。
売掛金や受取手形、未収家賃や貸付金などのほかに使用人に対する貸付金・前払給料、概算旅費なども対象になります。
状況に応じて以下の3パターンがあります。
| 状況 | 繰入可能額 |
| 更生計画・再生計画・特別清算に係る協定の認可の決定等がある場合 | 債権額のうち、その事由が発生した年の翌年以後5年間に弁済される金額以外の金額 |
| 債務超過が相当期間継続し弁済が困難と認められる場合等 | 取立て不能と認められる額の全額 |
| 更生手続・再生手続・破産手続の申し立て等がある場合 外国政府等に対する債権が長期にわたり債務の履行遅延がある場合 | (債権額-取り立て見込みがある金額)×50% |
※ 「相当期間」については、概ね1年超の債務超過継続が目安とされますが、業種・取引の実態によって判断が異なります。
税務署の調査でも論点になりやすいため、裏付け書類(信用調査報告書、内容証明等)の保管が重要です。
一括評価金銭債権
青色申告を選択している事業所得者は、一般的な売掛金や貸付金(事業に関連するもの)の総額に対して、一括して貸倒引当金を計上できる特例があります。
上記の個別評価金銭債権を除いた金額が対象となり、その限度額は下記のようになります。
計算式:期末の一括評価対象債権残高 × 繰入率
| 業種区分 | 繰入率 |
| 一般の事業(小売・サービス・製造等) | 5.5% |
| 金融業 | 3.3% |
例えば、期末の売掛金残高が100万円の小売業者であれば、55,000円を必要経費として計上できます。
対象となる債権・ならない債権
- 対象:売掛金、受取手形、貸付金(事業上のもの)、未収収益など
- 対象外:個別評価の対象とした債権、将来精算される概算払い旅費など一時的な仮払金、保証金や敷金など
注意点
実質的に債権と認められない金額
個別評価や一括評価の対象となる債権であっても、その一部が実質的に回収できないとはいえない場合、その部分を繰入額の計算から除かなければなりません。
例えば下記のような金額は実質的に債権と認められない金額として対象となる債権から除くとされています。
- 同一取引先との間に売掛金や受取手形と買掛金がある場合、売掛金等のうち買掛金相当額
- 同一人に対する未収家賃と預かり敷金がある場合、未収家賃のうち敷金までの金額
事業の全部を譲渡又は廃止した場合
事業の全部を譲渡し又は廃止した年度については貸倒引当金の設定はできません。
事業を廃止した際に残っていた債権が、後日貸し倒れた場合は、事業を廃止した年分又はその前年分の事業所得の必要経費となりますので更正の請求を行います。
納税者が年の中途で死亡した場合
事業主が年の中途で死亡した場合でも貸倒引当金の設定は可能ですが、通常とは異なる特別な取り扱いが適用されます。
通常は12月31日時点の債権残高で計算しますが、年の中途で死亡した場合は死亡の時点が基準日となります。
しかし相続人が事業を承継しなかった場合にはこの取り扱いは適用できず、亡くなった事業主の準確定申告において貸倒引当金を計上することはできません。
あくまで相続人が事業を承継し、事業が継続している場合のみの特例と考えておきましょう。
まとめ
貸倒引当金は、将来の不測の事態に備えるために事前に経費を計上できる制度です。
特に事業所得を営んでいる青色申告者にとっては、形式的な計算で経費を上乗せできるメリットがありますが、対象となる債権の選択や要件の確認は不可欠です。
白色申告の方も個別評価は利用できますので、まずは取引先の信用状況を定期的に確認する習慣を持ちましょう。
当事務所では、顧問契約をご検討中の方を対象に初回面談を無料で実施していますのでお気軽にお問い合わせください。

