固定資産の取得価格に算入される費用の実務のポイント

固定資産の取得価額の算定は、法人税や所得税の計算において減価償却費を正確に計上するための基礎となる重要な作業です。
しかし、実務上「何を取得価額に含めるべきか」という点で判断に迷うケースが少なくありません。
経費にできる費用を固定資産で処理していたり、取得価額に含めなければならないものを経費処理していて税務調査で追徴課税を指摘されてしまったといったことがあってはもったいありません。
今回は、固定資産の取得価額に算入すべき費用の範囲と具体例について、税法の観点から整理してみたいと思います。
目次
取得価額の基本的な考え方
固定資産(減価償却資産)の取得価額には原則として、その資産の購入対価とその資産を事業に使うための準備に要した費用が含まれます。
購入対価はその名の通り、その資産を購入する際に支払った対価です。
一方、事業に使うための準備に要した費用の範囲はどの程度まで含まれるのでしょうか。
国税庁HPではその資産を引き取るための費用(運賃や運送保険料・関税など)や機械などの据え付け費・試運転費、不動産取引などにおける仲介手数料などは取得価額に含めるものとされていますが下記のような費用は取得価額に含めなくてよいものとされています。
取得価額に算入されないもの(費用処理されるもの)
- 不動産取得税や自動車取得税
- 登録免許税など登記などのために必要な費用
- その資産を購入するために行った借入金の利子
- 建物を建設するために行った調査や測量、設計、基礎工事でその建設計画を変更したことにより不要となったもの
建設計画の変更がないものに関しては取得価額に含まれますので注意が必要です。
平泉近辺では建物の建築に際して埋蔵文化財の発掘調査が必要になることもありますが、この場合の調査費用は取得価額に含めずに費用処理することができます。
ただしその発掘費用込みで通常の取引価額より低く土地を取得した場合にはこの限りではありません。
また上記の費用は取得価額に含めないことができるものなので取得価額に含めてもよいこととされています。
固定資産の取得価額に含めると経費化されるタイミングは遅くなりますが、中小企業投資促進税制などの税額控除の対象となる金額が大きくなりますのでご自身にとってどちらが有利となるか慎重に判断しましょう。
実務上の留意点
未経過固定資産税
土地や建物などの不動産売買においては、所有期間に応じた固定資産税相当額を不動産価額に反映させる取引慣行がみられます。
買主側で負担した固定資産税相当額は経費とはならず、その土地・建物などの取得価額に含まれることになります。
建物の取り壊し費用
もともと建物が建っている土地をその建物と一緒に購入し、1年以内に取り壊して新しい建物を建築する場合は、その旧建物の取り壊し費用を経費とすることはできません。
旧建物の取得価額と取り壊し費用ともども土地の取得価額に含まれます。
土地の基礎固めの費用
建物などを建てるために行う地質調査や地盤強化・基礎固めなどの費用は土地の取得価額ではなく建物などの取得価額となります。
土地の取得価額に算入されるとその土地を売却するまで経費化されませんので、忘れずに建物などの取得価額に含めるようにしましょう。
自家建設の場合
建設業を営んでいる企業が自社工場などを自社で建設した場合などは適正な原価計算基準に従って製造原価を計算し取得価額とします。
自社の従業員の給与などの経費も建物の取得価額に振り替えるなどしなければならないため注意が必要です。
まとめ
固定資産の取得価額に算入すべき費用は、その資産を事業の用に供するために直接要した費用が基本となります。
本体価格のみならず、運搬費用や設置費用、登録費用なども含まれる点に注意が必要です。
一方で、資産の取得に関連してはいても、事業供用のために直接必要でない費用は取得価額に含めるべきではありません。
適正な取得価額の算定は、減価償却を通じて複数年にわたり企業の課税所得に影響を与えるため、初期段階での正確な判断が重要です。
筒井会計事務所では高額な固定資産を取得する際などにも、事前に税務上の取り扱いの確認に関する相談を承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。