令和7年度 税制改正要望
例年12月に公表される税制改正大綱ですが今年も各省庁より税制改正要望が提出されています。
気になったものをいくつかピックアップしてみました。
法人版事業承継税制
- 法人版事業承継税制のあらまし
法人版事業承継税制とは一定の要件のもと、非上場会社の株式に係る相続税・贈与税を猶予・免除することができる税制です。
この税制には恒久的な『一般措置』と10年間の時限措置として一般措置の制約を大幅に緩和した『特例措置』がありその制度の比較は下記のようになっています。
| 特例措置 | 一般措置 | |
| 事前の計画策定等 | 特例承継計画の提出 2018（平成30）年4月1日から 2026（令和8）年3月31日まで | 不要 |
| 適用期限 | 次の期間の贈与・相続等 2018（平成30）年1月1日から 2027（令和9）年12月31日まで | なし |
| 対象株数 | 全株式 | 総株式数の最大2/3まで |
| 納税猶予割合 | 100％ | 贈与：100％ 相続：80％ |
| 承継パターン | 複数の株主から 最大3人の後継者 | 複数の株主から 1人の後継者 |
| 雇用確保要件 | 弾力化 | 承継後5年間 平均8割の雇用維持が必要 |
| 事業の継続が困難な事由が 生じた場合の免除 | あり | なし |
| 相続時精算課税の適用 | 60歳以上の者から 18歳以上の者への贈与 | 60歳以上の者から 18歳以上の推定相続人 （直系卑属）・孫への贈与 |
- 要望内容
この特例措置の適用を受けるには後継者の方が贈与の日において3年以上会社の役員であることが要件の一つとしてあるため、今月末までに役員就任が必要です。
今回の要望ではこの役員就任要件の見直しが提出されています。
役員に就任すると報酬が固定化されたり雇用保険や労災保険への加入対象外となったりデメリットも少なからず出てきますので要件が緩和されるか注目です。
中小企業投資促進税制・中小企業等の法人税率の特例・固定資産税の特例
- 各税制の概要
いずれも中小企業を対象とした税金の減免措置で2025年3月31日が適用期限となっています。
大まかな内容は下記のとおりです。
| 対象者 | 内容 | |
| 中小企業投資促進税制 | 中小企業者等、従業員1000人以下の個人事業主 | 一定の機械装置等の30％特別償却 又は7％税額控除 |
| 中小企業の法人税率の特例 | 中小法人 | 年800万円以下の所得に係る法人税率を19％→15％に軽減 |
| 固定資産税の特例 | 先端設備等導入計画の認定を受けた中小事業者等 | 投資計画に記載された一定の機械装置等の固定資産税を1/2に軽減 |
- 要望の内容
適用期限を2年延長するよう要望が出されています。
法人税率の特例は中小企業の成長を阻害しているなんていう記事も出ていましたが、物価高や人材不足など経営環境が依然厳しい状況を考えると延長が妥当ではないかと思います。
納税環境整備
- 退職所得控除の調整規定の見直し
現在、確定拠出年金に係る一時金を受け取る場合は退職所得として取り扱われています。
退職所得への課税は他の所得と比べて大幅に軽減されており、原則として次のように計算します。
（収入金額ー※退職所得控除額）×1/2＝退職所得の金額
※退職所得控除額…勤続年数が20年未満の場合：40万×勤続年数、勤続年数が20年以上の場合：800万＋70万×（勤続年数ー20年）
上記の退職所得控除額ですが退職金を一定の期間内に二度以上受け取ると減額調整計算が行われます。
確定拠出年金に係る一時金を会社の退職金より先に受け取っている場合には、5年間開いていればよかったのですが、その期間を10年に延長することが検討されているようです。
また退職所得の源泉徴収票の税務署提出の一律義務化も併せて要望されています。（税務通信 3829号）
印紙税
- 要望の内容
電子取引の拡大など経済状況の変化に伴い徐々に課税の公平性が保てなくなってきている印紙税ですが根本的な見直しが提案され続けています。
平成22年より要望が続いているようなのですが改正には至っていません。
ただ現在でも印紙収入が1兆円（全体の租税収入の1.6％）もあることを考えると安易に廃止できないのでしょうか。
ちなみに平成12年の印紙税収入は1.5兆円（全体の3％）、平成2年は1.9兆円（全体の3.2％）でしたので金額・全体に占める割合ともに減少傾向であることは間違いないようです。
おわりに
令和7年度税制改正要望のうち中小企業に関係しそうなところをピックアップしましたが各省庁からの要望はまだまだ沢山でています。
この中でいくつ実際の改正につながるか目が離せませんが、今回の衆院選で自民党が少数与党になったことから協議が難航することも予想されますので、今年は公表される時期も気にしていると面白いかもしれません。
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