令和8年度税制改正大綱をチェック~中小企業の稼ぐ力を支える新制度~

令和7年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱では、物価高に負けない強い経済をつくるための施策が数多く盛り込まれました。

特に中小企業に対しては、人手不足の中での賃上げや、攻めの設備投資を後押しする内容が目立ちます。

一方で、大企業向けの優遇措置が一部廃止されるなど、メリハリの利いた改正となっています。

今回は令和8年度税制改正大綱のうち、特に中小企業に影響のありそうな部分を紐解いていきます。

中小企業向けの賃上げ促進税制は現行制度を維持

今回の改正で大きな動きがあったのが賃上げ促進税制です。

大企業向けの措置が令和8年3月31日をもって廃止され、中堅企業向けも要件が厳格化(賃上げ率4%以上へ引き上げ)された上で令和9年3月31日をもって廃止される中で、中小企業向けの措置については現行の制度が維持されることになりました。

これは、防衛的賃上げに苦しむ中小企業の現状に配慮した形といえます。

人手不足が深刻化するなか、賃上げを検討している企業にとっては、引き続き税額控除という形で背中を押してもらえる状況が続きます。

ただし、教育訓練費に係る上乗せ措置については廃止される点に注意が必要です。

賃上げは単なるコスト増ではなく、優秀な人材を繋ぎ止めるための投資でもあります。

税制のメリットを最大限に活かしつつ、中長期的な視点で人件費のあり方を考えていく良い機会になるのではないでしょうか。

大胆な設備投資を促す新税制と少額資産の基準引き上げ

生産性向上を目指す企業にとって見逃せないのが、新たに創設される特定生産性向上設備等投資促進税制です。

青色申告をしている中小企業の場合、経済産業大臣の確認を受けた一定の投資計画に記載された設備投資額が5億円以上の高付加価値な投資を行うと、即時償却や7%(建物・構築物は4%)の税額控除を選択できるようになります。

また、より身近な実務に関係するのが、少額減価償却資産の特例の見直しです。

これまで30万円未満だった全額損金算入の基準が、40万円未満へと引き上げられます。

昨今の物価高により、備品や事務機器の価格も上がっている実態に即した改正といえるでしょう。

この特例は令和11年3月31日まで3年間の延長も予定されていますが、常時使用する従業員数が400人を超える法人は適用対象から除外されますので、該当する企業は注意が必要です。

研究開発税制に3年間の税額控除繰越しを導入

中小企業の技術力を支える研究開発税制についても改正がありました。

これまで、一時的に赤字が出てしまった年度は税額控除を受けられず、そのメリットを活かしきれないという課題がありました。

今回の改正では、新たに3年間の税額控除の繰越しが可能になりますので、単年度の業績に左右されず、腰を据えて継続的な研究開発に取り組むことができるようになります。

さらに、AI・量子・バイオなどの戦略技術領域については、別枠で高い控除率が設定される戦略技術領域型が新設されます。

研究開発費の管理や、対象となる費用の洗い出しなど、経理面での事前の準備もより重要になってくるでしょう。

事業承継税制の計画提出期限は令和8年3月末まで

経営者の世代交代という大きな課題に対する準備期限について、改めて確認しておく必要があります。

法人版事業承継税制の特例措置に必要な特例承継計画と、個人版の個人事業承継計画の従前の提出期限はいずれも令和8年3月31日までとなっています。

これらの期限は、令和6年度税制改正で既に2年間延長されていましたが、今回さらに個人版は2年6か月延長され令和10年9月30日まで、法人版は1年6か月延長され令和9年9月30日までとなりました。

特に重要なのは、計画の提出期限は延長されたものの、実際の贈与・相続の実行期限(法人版は令和9年12月31日、個人版は令和10年12月31日)は延長されないという点です。

大綱では、この特例措置は極めて異例の時限措置として、今後の適用期限延長を行わないことが明記されています。

承継計画の提出期限が延びたからといって先送りにすることなく、円滑な承継を行うための具体的なアクションを起こしましょう。

インボイス制度の経過措置が段階的に見直し

消費税の実務に関わるインボイス制度についても、今後の動向が示されました。

いわゆる2割特例(新たにインボイス発行事業者となった小規模事業者に関する経過措置)については、個人事業者に限り納税額を売上税額の3割とした上で、令和10年に含まれる課税期間まで2年間延長されます。

また、いわゆる8割特例(免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置)については、段階的に縮減されます。

令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月から3割として、最終的な適用期限が令和13年9月末までと当初適用期限から2年間延長されることになりました。

インボイス制度の導入から時間が経過し、実務にも慣れてきた頃かとは思いますが、経過措置の終了タイミングについては、引き続き注視しておく必要があります。

経理処理の自動化やデジタル化を進めるなど、制度の変更に柔軟に対応できる体制を整えておくことが、将来的な事務負担の軽減に繋がります。

まとめ

令和8年度の税制改正は、中小企業にとって追い風となる投資促進策や、事業承継に向けた最後の準備機会の重要性を示す内容となりました。

このほかにも青色申告特別控除の見直しなども予定されています。

一方で、減税措置の縮減なども進んでおり、経営環境の変化に合わせた柔軟な舵取りが必要です。

当事務所では顧問契約をご検討中の方を対象に、初回面談を無料で実施していますのでお気軽にお問い合わせください。

\ 最新情報をチェック /