給与と外注費の境界線:税務調査でチェックされるポイントを徹底解説

「あれ?この人に支払うお金って、給与?それとも外注費?」
日々の業務の中で、こんな風に迷われた経験はありませんか?
給与と外注費は、税務上も会計上も全く異なる性質を持ちますが、その区別は意外と曖昧になりがちです。
最近ではギグ・エコノミーも社会に浸透してきていますのでますます雇用と請負の境界線は判断が難しくなっているのではないでしょうか。
もし区別を誤ってしまうと、税務調査で指摘を受け、追徴課税が発生する可能性も…。
そこで今回は、税理士が給与と外注費の違いを徹底解説!具体的な事例や注意点も交えながら、正しい区分のポイントをお伝えします。
目次
給与と外注費の定義と影響
給与とは主に雇用契約に基づいて雇用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として雇用者から受けるものをいいます。
一方外注費は自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性、反復継続性を有して行われる事業から生じるものを言います。
個人が企業に対して行った労務の対価については給与なのか外注費なのか判断に迷うケースがあります。
では給与と外注費で取り扱いが異なるものにはどのようなものがあるのでしょうか。
源泉徴収
外注費の中にも一定の源泉徴収を行うものもありますが、多くの外注費については所得税の源泉徴収は行われません。
しかし給与とされる金銭を受け取る場合は源泉所得税が徴収され、扶養控除申告書を雇用主に提出していない場合は乙欄という高い税額の徴収となります。
給与の支払者は原則として支払月の翌月10日までに源泉所得税を税務署に納めなければなりません。
消費税
消費税の基本的な納付額は受け取った消費税ー支払った消費税で計算することができます。
外注費には消費税が含まれていると考えられますので支払った消費税が多くなり、結果として消費税の納付額が少なくなります。
しかし給与は消費税の課税対象ではないため支払った消費税は増えません。
ちなみに簡易課税方式やインボイスの2割課税を適用している場合は受け取った消費税から概算の支払った消費税を計算しますので、支払った金銭が給与でも外注費でも納付税額への影響はありません。
社会保険
外注先の社会保険料は外注先自身が負担しますが、従業員の社会保険料は折半額を企業が負担します。
社会保険料の負担額は報酬額の15%程度となりますので負担も重くなりがちです。
判断基準と実務上の注意点
報酬の支払いが給与とされるか、外注費とされるかは原則として雇用契約を結んでいるかどうかで判定されます。
しかし雇用契約がない場合でその区分が明らかではないときは次の事項を総合勘案して行われます。
非代替性(その人の仕事を他人に代わって行ってもらうことが許されるか)
給与の場合は、その人自身の労務の対価として給与を受け取っているので別の人に仕事を代わってもらい自分が給与を受け取ることはできません。
一方、事業主は仕事の期限や代金を決めた後は、必ずしも自分が行う必要はなく、自身が雇用した第三者に委託することもできます。
指揮監督性(仕事をするに当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか)
作業の内容や方法について事業者から具体的に指揮監督をうけるかどうかも判定の基礎になります。
タイムカードなどにより作業時間が管理されたり作業場所が限定され拘束性が強い場合にも給与として認定されるでしょう。
危険負担
まだ納品していない成果物が予期しない災害などで消えてしまった場合でも、その人がすでに行った仕事に対して報酬を請求できるかどうかも重要です。
請負の場合は納品された成果物に対して報酬が支払われるのが通常ですが、成果物がなくともそこにかけた時間などに対して報酬が支払われる場合は給与と認定される可能性が高いでしょう。
時間外手当や賞与などの支払がある場合も同様です。
一方、保証給の無い完全出来高払い制は成果がなければ報酬も0となってしまいます。
雇用関係というより個人事業主との業務委託契約が存在するとみることができますので外注費に該当するものと考えます。
材料等の支給
仕事を行う際に、その仕事に必要な材料や道具が事業者から渡されているかどうかを指しています。
これらのものが事業者から支給されていると給与と認定される可能性が高くなりますが、高価な設備や業務に必要な人員などを自分で準備している場合は請負と主張できるでしょう。
しかし例えばトラックドライバーが自己所有のトラックを持ち込んで業務を行っている場合でも、そのほかの要素が給与として認定される場合は、その報酬を給与とトラックの賃借料とに分けて処理することも考えられます。
実務上の注意点
支払者の組織図等に記載がある場合
いくら外注費として計上していても報酬の支払者の組織図や配席図にその者の氏名の記載がある場合などは給与として認定されてしまう可能性が高くなります。
従業員と誤認されるような紛らわしい表示は避けましょう。
受け取り側が事業所得で確定申告をしていても給与と認定されることがある
請負として業務を受託している者は確定申告をする際に給与所得ではなく事業所得として申告していることと思います。
しかしこの申告をもって請負と認定されることはありません。
また報酬の受け取り側が消費税のインボイス登録をし、報酬の支払者へインボイスを発行している場合も同様です。
あくまで前述のような事実認定によって総合的に判断されますので確定申告の所得区分やインボイス登録の有無は一つの判断要素程度にとどめておきましょう。
まとめ
外注費だと認識していたものが税務調査により給与と認定されると源泉所得税や消費税のほかに延滞税や加算税なども課されてしまいます。
一方、外注費として計上できるものを給与として処理してしまっている場合は過大な税金負担をしていることとなりますので、給与か外注費かの判断は注意が必要です。
筒井会計事務所では判断に迷う税務問題のご相談も承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。