その所得は本当に事業?収入300万円と帳簿の保存が分岐点

確定申告の時期が近づいてきましたが、所得の区分に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、副収入や新しいビジネスを始めた際、それが事業所得になるのか、あるいは雑所得になるのかという判断は、税金計算に大きな影響を及ぼします。

今回は、判断が難しい雑所得に関する所得区分のポイントを解説します。

雑所得の基本的な定義と具体例

所得税法では、利子所得や配当所得、事業所得といった9種類の所得のいずれにも当てはまらないものを雑所得と定義しています。

いわば、どの箱にも入らなかった所得を最後に受け入れるバスケットカテゴリーです。

具体的には、法人の役員が勤務先に預けているお金の利子や、還付加算金、さらには暗号資産の売却益などがこれに該当します。

サラリーマンの方が勤務先の取引先などから受けた贈答品なども雑所得の例示に挙げられています。

また、生命保険契約に基づく年金や、就職に伴う転居費用で通常必要と認められる範囲を超えたものなども雑所得として扱われます。

実務でよく見かけるのは、金銭債権や外国通貨の譲渡から生じる所得です。

これらは資産の値上がり益が生じないと認められる資産の譲渡として、譲渡所得ではなく雑所得に分類される点に注意が必要です。

まずは、自分に該当する所得がないかどうか、ある場合はどの所得の区分に該当するかを確認しましょう。

業務に係る雑所得の範囲

雑所得の中でも、公的年金等以外のものは「業務に係る雑所得」と「その他雑所得」に区分されます。

業務に係る雑所得の代表例としては、原稿料や印税、講演料などが挙げられます。

他にも、動産の貸付けや金銭の貸付けによる所得、あるいは営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得もここに含まれます。

実務上、これらが事業所得と混同されやすいのは、活動自体に継続性があるケースが多いからです。

例えば、週末に趣味の延長でデザインの仕事を請け負ったり、特定の機材を貸し出したりして利益を得ている場合、それらは事業と呼べる規模でなければ、この「業務に係る雑所得」に該当することになります。

なお、船舶や航空機の貸付けは不動産所得に該当するため、雑所得からは除外されます。

事業所得かどうかの判定基準

社会通念での判断

ある所得が事業所得と言えるかどうかは、その活動が社会通念上で事業と呼べる程度の規模で行われているかで判定します。

これについて過去の判例では、自己の計算と責任において独立して営まれているか、営利性や有償性があるか、そして反復継続して遂行する意思があるかといった点が重要視されています。

単に継続的な収入があるだけでは不十分と言えます。

さらに具体的には、その取引に費やした精神的・肉体的な労力の程度や、人的・物的な設備の有無、本人の職歴や社会的地位なども総合的に勘案されます 。

例えば、会社員が片手間に自宅で作業している場合と、専用の事務所を構えてスタッフを雇い、フルタイムで取り組んでいる場合では、社会的な見え方が異なります。

税務上の判断においても、こうした客観的な事実を積み上げ、独立した経済活動として自立しているかどうかが厳しく問われることになります 。

帳簿書類の保存

所得区分を判断する際、実務上で極めて大きな役割を果たすのが帳簿の有無です。

原則として、取引を記録した帳簿書類を保存していない場合、その所得は事業所得ではなく「業務に係る雑所得」として扱われます。

これは、事業を営む者であれば当然に行うべき記帳がなされていない以上、営利性や企画遂行性があるとは認めがたいという考えに基づいています。

目安となるのは収入金額300万円というラインで、収入が300万円を超えており、かつ帳簿を適切に保存していれば、概ね事業所得として認められる可能性が高まります。

逆に、収入が300万円以下で帳簿もない場合は、原則として業務に係る雑所得となります。

ただし、収入が300万円を超えていても、帳簿がなければ原則として雑所得扱いですが、帳簿がない場合でも、事業所得と認められるだけの顕著な事実がある場合には、個別に判断される余地は残されています 。

事業所得と認められない例外的なケース

帳簿をしっかり保存し、収入が300万円を超えていれば必ず事業所得になるかというと、実はそうではありません。

特定の条件下では、個別に事業性が判断され、雑所得に修正されることがあります。

その一つが、収入金額が極めて少ない場合です。

例えば、直近3年間の毎年の収入が300万円以下で、かつ本業などの主たる収入の10パーセント未満しか稼げていないようなケースです。

また、営利性が認められない場合も要注意です。

具体的には、例年赤字が続いており、かつその赤字を解消するための具体的な営業活動や経営改善の取り組みを行っていない場合、それは事業ではなく趣味や副業の範囲内とみなされる恐れがあります。

ここでの「赤字解消の取り組み」とは、収入を増やすための積極的な活動を指します。

帳簿を整えることは大前提ですが、それ以上に、その活動が経済的に合理性を持ち、本気で収益を上げようとしている実態が伴っているかどうかが重要です。

まとめ

雑所得と事業所得の区分は、単なる名称の違いではなく、帳簿の保存状況や収入規模、そして活動の熱量といった実態まで総合的に勘案して判断されます。

まずはご自身の活動が社会通念上の事業に該当するか、適切な記帳ができているかを見直してみましょう。

当事務所では、記帳指導から所得区分の適切な判断まで、実務に即したアドバイスを行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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