節税の成否を分ける境界線~事業供用日と実務上の注意点~

決算対策のために決算日直前で設備投資を行うケースが多く見られます。

しかし、税務の世界ではお金を払ってモノが届いただけでは経費として認められません。

そこで重要になるのが事業供用日です。

いつから使い始めたかという判定一つで、その年の税金が大きく変わることも珍しくありません。

今回は、実務で間違いやすい事業供用日の定義や、節税に直結する重要な論点について、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。

事業供用日とは

固定資産の減価償却を開始できるタイミングは、その資産を事業の用に供した日と定められています。

これは、単に製品が手元に届いた日や、代金を支払った日を指すのではありません。

その資産が本来の目的のために、実際に稼働できる状態になり、かつ実際に使い始めたタイミングを指します。

例えば、パソコンを購入したとしても、箱に入ったままデスクの横に置かれている状態では事業の用に供したとは言えません。

電源を入れ、必要なソフトをインストールし、業務に使用できる状態に整えて初めて減価償却を行うことができます。

また賃貸用不動産などでは、実際に入居が無くとも、入居募集を開始していれば事業の用に供している状態とみなされます。

いつでも使える状態であることと、実際に使い始めていることという、実態が伴っているかが重要です。

2. 減価償却と特別償却に与える影響

事業供用日は、減価償却費の計算で重要な意味を持ちますが、合わせて税制優遇の適用可否にも大きな影響を与えます。

まず、通常の減価償却は月割りで計算されるため、決算月の一日でも前に使い始めたか、それとも翌期にずれ込んだかで、その期の経費額が変わります。

さらに影響が大きいのが、特別償却や税額控除といった税制優遇の制度です。

これらの納税者有利となる制度は、その事業年度中に事業の用に供していることが適用の絶対条件となります。

仮に決算日までに資産が手元に届いていても、稼働が翌期になれば、その年度の優遇措置は一切受けられません。

たった数日の差で、数百万円単位の税負担が変わることもあるため、投資計画には余裕を持ったスケジュール管理が求められます。

具体的な判定例

パソコン、車、備品

事業供用日の判断は、資産の種類によって異なります。

事務用のパソコンであれば、初期設定を終えて業務メールの送受信や資料作成ができるようになった日が該当します。

社用車の場合は、ナンバープレートを取得して公道を走れるようになり、実際に業務の目的地へ向かうために運行を開始した日です。

また、応接セットなどの備品であれば、応接室に配置して来客を迎えられる状態になった時点が目安となります。

このように、その資産が持つ本来の機能を果たせる状態になり、かつ実際にその目的のために活用されているかどうかが問われます。

単なる納品伝票の日付だけで判断せず、実態に即した日付を把握しておくことが、適切な経理処理の第一歩となります。

建物、内装、機械装置

より複雑なのが、店舗の内装や工場の機械装置です。

飲食店であれば、内装工事が完了した日ではなく、実際にオープンして営業を開始した日が事業供用日となります。

プレオープンなどで試験的に稼働させている場合も含まれますが、単なるスタッフの研修期間などは慎重な判断が必要です。

工場の機械であれば、搬入された日ではなく、据付工事と試運転を経て、製品の製造が可能な状態になった日が該当します。

大規模な設備になればなるほど、取得から稼働までにタイムラグが生じやすいため、工事完了報告書や検収書の日付を確認し、実態と乖離がないように記録を残しておくことが、実務上のミスを防ぐコツです。

税務調査でチェックされる証拠書類

事業供用日は、税務調査において調査官がよく確認する項目の一つです。

特に決算直前の大きな買い物については、本当にその期の中に使い始めたのかを重点的にチェックされます。

このとき、言葉だけで説明しても説得力に欠けますので、重要になるのが客観的な証拠です。

納品書や検収書はもちろん、パソコンなら設定完了時のログイン記録、車なら運行日誌やガソリンの領収書、機械なら製造日報などが有効な証拠になります。

ソフトウェアであれば、インストールした日付やログオンの履歴が残ります。

いつ、誰が、どのように使い始めたのかを記録しておく習慣をつけておけば、万が一の調査の際にも慌てることなく、自社の正当性を主張することができるでしょう。

まとめ

固定資産の事業供用日は、減価償却の開始だけでなく、特別償却などの税制優遇を受けられるかどうかを決める極めて重要なポイントです。

単なる支払いの日付などで判断せず、実際に事業で使用した日付を把握し、それを証明する資料を整えておくことが税務調査などでも求められます。

当事務所では、顧問契約をご検討中の方を対象に初回面談を無料で実施していますので、不安な点がある場合などはお気軽にお問い合わせください。

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