法律を当てはめる前に重要になってくる事実認定

税金の計算は、年々複雑になっていきますが、自分に有利な制度を選択して、間違えずに申告書に数字をきちんと入れれば何も問題がないという訳ではありません。

実は、その数字の前提となる本当の状況がどうだったのかという、事実認定がまずは大切になってきます。

税務署は、形式的な書類やお金の動きなどももちろん確認しますが、そもそもどういう取引だったのかという中身を厳しく見ています。

今回は、ついつい軽く扱いがちな実態の証明について、具体的な例を挙げながら分かりやすくお話ししていきます。

税金の土台を作る事実認定

税金を正しく計算するためには、いくつかのルールがあります。

誰が税金を払うのか、何に対してかかるのか、といった基本的な項目がありますが、それらの前提となるのが事実認定です。

これは、実際に起きた出来事がどのような性質のものだったのかを、客観的な証拠から判断することを言います。

例えば、ある儲けが出たときに、それを誰の所得になるのかで税金の額が変わることがあります。

もし、この事実の捉え方を間違えてしまうと、本来は払う必要のない税金を負担することになったり、逆に納め過ぎてしまったりすることもあるでしょう。

税理士が納税者の方に細かく状況を伺うのは、この土台をしっかりと固めるためです。

事実が曖昧なままでは、どんなに高度な節税テクニックを使っても、税務調査の際に土台から揺らぎかねません。

まずは、目の前の取引などの実態が、客観的にどう判断されるのかを意識することから始まります。

事実認定が争われる場面

所得の帰属

税務上の大きなルールのひとつに、実質所得者課税の原則というものがあります。

これは、たとえ通帳や契約書に書いてある名前がAさんであっても、そのお金を実質的に自由に使い、利益を得ているのがBさんであれば、Bさんの所得として税金を計算するという決まりです。

なぜこんなルールがあるかというと、所得を家族などに分散させて、税率を低く抑えようとする行為を防ぐためだったりもします。

税務署は、誰がその事業の指図を出し、誰が印鑑や通帳を管理しているのかという実態を非常に重視します。

もし、家族の名前で仕事をしているけれど、実際には本人が全てを仕切っているような場合、それは名義貸しとみなされる可能性があります。

名前を分けるという形式だけを整えても、実態が伴っていなければ意味がありません。

そのお金は本当に誰のものなのか、という問いに対して、自信を持って実態を説明できる準備が必要なのです。

生計が一かどうか

家族に関する税金の特例でよく出てくるのが、生計を一にするという言葉です。

これは、簡単にお伝えすると、お財布が同じであるという意味です。

同居していればまず生計は一つと見られますが、別居でも生計が一つと認定されるケースもあります。

例えば、お父さんが単身赴任をしていたり、お子さんが遠くの大学で一人暮らしをしていたりする場合でも、休みの日には実家に帰って一緒に過ごすのが当たり前だったり、常に生活費や学資の送金が行われていたりすれば、生計を一にしていると認められます。

大切なのは、離れて暮らしていても経済的に助け合っているという実態があるかどうかです。

一方で、同じ家で暮らしていても、お互いの収入で完全に独立して生活していれば、生計は別だと判断されることもあります。

いつ、いくら送金したのかといった記録や、家族としての普段の生活などの事実を、いかに積み上げられるかがポイントになります。

交際費と寄付金の分かれ目

法人の経理で頭を悩ませるのが、取引先への支出が交際費になるのか、それとも寄付金になるのかという問題です。

この二つの違いは、税金計算上の経費にできる枠に大きな差があるため、非常に重要です。

この区分を決めるのも、支出の目的という事実認定です。

交際費は、仕事の関係者と仲良くなって、これからの取引をスムーズにするための支払です。

それに対して寄付金は、仕事とは直接関係なく、相手に一方的に利益を与えるような支出を指します。

例えば、取引先のお祝いにお金を包んだとしても、それが世間一般の常識を超えてあまりに高額だったり、業務上の必要性が説明できなかったりすると、寄付金として扱われてしまうことがあります。

そのお金を払うことで、会社にとってどのようなメリットがあるのか、どうしてその金額になったのかという背景が問われます。

領収書を保管するだけでなく、誰と、何の目的で会ったのかという記録を残しておくことが、後々の説明のために必要です。

書類の保存

どんなに正当な主張をしていても、それを証明する証拠がなければ、税務署などの第三者を納得させることはできません。

過去の例では、自分の家に住んでいたと主張しながらも、電気や水道の使用量が極端に少なかったために、居住実態がないと判断されたケースがあります。

ガスを全く使っていない、電話の記録がないといった客観的なデータがあると、いくら居住の実態があったと主張しても通らないかもしれません。

通帳の履歴、送金明細、日々の活動を記したメモ、そして公共料金の明細書など。

これらの一つひとつが、事実を証明する重要な証拠になります。

税務調査が来てから慌てるのではなく、日頃から事実を裏付ける書類を丁寧に保存しておくことが、最も確実で効果的な税務対策なのです。

まとめ

税務において、事実がどこにあるかを見極める事実認定は、申告の正否を決める非常に重要なプロセスです。

証拠としての書類の整備も大切ですが、それ以上に日々の活動や実態が伴っているかを確認する習慣を身につけていただければと思います。

当事務所では、顧問契約をご検討中の方を対象に初回面談を無料で実施していますので、現在の状況が税務上どう判断されるか詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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